
「腰の筋肉を軟らかくして無緊張状態に変えてしまうことで、あらゆる慢性痛は改善され、再発もしなくなる」
これは東京・日本橋「痛みの専門院」院長を務める坂戸先生による「緩消法」の理論です。
この理論に基づいたアプローチで、数多くの患者さんを救ってきた緩消法。
ただ、腰の筋肉を軟らかくしてしまうことに、不安を感じられる方もいらっしゃるそうです。
そもそも、私たちは「身体は筋肉によって支えられている」とメディアで見聞きしたり医師からアドバイスされたりする機会が多いので、
「軟らかくしてしまったらどうなるか?」という部分はやはり気になるところですよね。
そこで今回は、緩消法サポート事務局の伊藤が坂戸先生に、「筋肉は本当に身体を支えているのか?」「身体の仕組みはどうなっているのか?」についてお聞きしました。
1.身体を支える筋肉が軟らかくなっても問題ない

伊藤「今回は、腰椎椎間板ヘルニアの手術を受け、椎間板を除去した方から質問をいただきました。
緩消法で腰部の筋肉を無緊張状態にすると、椎体を保護する筋肉の柱がなくなってしまうと考えています。
『これによって椎体への圧力が常にかかっている状態になり、骨曲の形成が促進されて神経根への接触機会が増え、
最終的には麻痺状態になるリスクが高まるのではないか?』と不安に感じます。
このような点に関し、坂戸先生の見解をお聞きしたいそうです」
坂戸先生「わかりました。では今回の質問にお答えする前に、
まず『椎体への圧力が常にかかるから、筋肉の柱がなくなる』という
考えについて私の見解をお話ししていきます」
坂戸先生「私は緩消法を通じ、400人から500人にわたる多くの方に対し、腰の筋肉を無緊張状態にしてきました。
腰の中をすべて軟らかくしてきています。
そのうえで言えることなのですが、『筋肉が身体を支えているという考えは間違っている』ということです。
元々学者の方々のなかでは常識的な話ではあったため、今でもそう考えてしまう方が多いですけれどね」
伊藤「そう思ってしまうことはありますよね」
坂戸先生「はい。でも、必ずしもそうだとは言えないのです。
例えば動物のキリンは首がとても長いですが、あの首を筋肉だけで支えるってとても無理ですよ。重力に負けてしまいますからね」
伊藤「確かにそうですね」
坂戸先生「身体って実は、基本は風船のようなものなのです。
身体の中に水が溜まっていて、水の中にある骨が浮いている、その仕組みになっています。
ですから、『筋肉が身体を支えている』という考え自体が、正しくないのです」
坂戸先生「そこで腰の筋肉が無緊張状態になっても、骨が浮いているので、浮力が働きます。
したがって、
『筋肉を軟らかくしたから圧力が余計にかかってしまう』
『上半身の体重を骨だけで支えなければいけない』
ということは、そもそもあり得ません。
『筋肉で身体を支えている』と言われていること自体が、私としても誰がそれを言い始めたのかはわかりませんが、間違いなのです。
感覚でとらえてもおかしな話ですからね」
伊藤「なるほど」
坂戸先生「簡単に言えば、骨が浮いているから身体が支えられているのです。
物理に詳しい方ならわかると思うのですが、体重とこの重力を計算すると、本来身体ははつぶれてしまう仕組みになっています。
それこそキリンはクシャっとつぶれてしまうでしょうね」
伊藤「そういうものなんですね」
坂戸先生「はい。それで、『何が身体を支えているか?』という話になってくると、やはり『骨が浮いているから』という答えになりますね。
実際に試したことがある方はいないとおもいますが、生きていて骨膜がまだしっかりしている状態で動物を解体して、水の中に入れたとしましょう。
すると、中はみんな空気で、浮き輪みたいに浮いてしまうと思います」
坂戸先生「こうして考えていくと、筋肉で身体を支えるという発想自体が間違いだとわかります。
そう信じる方は決して少なくありませんが、身体を支えるのに筋肉は全く関係ありませんね」
・・・「身体を支えられなくなるから、筋肉をつけなさい」と言われたことがある方は非常に多いかと思いますので、これは驚きですよね!
この考えをたどっていくと、今回の質問者さまの不安も解消できそうです。
2.筋肉は硬いとデメリットが多い!軟らかくすべき理由とは

坂戸先生「反対に、筋肉が硬いと縮む力が働いてしまいます。
そこで椎体と椎体の間を縮めてしまい、椎間板ヘルニアのリスクが高まるのです。
当然、神経を圧迫する確率も上がるため、ヘルニアの発症率や下半身が麻痺する確率も上がります。
要するに、筋肉が硬い状態のほうが良くないのです」
伊藤「筋肉が硬いと神経を圧迫してしまうからですか?」
坂戸先生「そうです。石灰化してしまうと、完全に神経をつぶしてしまいますからね。
どちらにしても筋肉が硬い状態だとデメリットが多くなりますし、メリットだって一つもありません」
伊藤「そうなのですね。では例えば、椎間板がポンと出た状態でも、筋肉を弛緩させれば元に戻るということですか?」
坂戸先生「そうです。ただ、実は私も腰だけで3か所椎間板が出ているのですよ」
伊藤「今も出ているのですよね?」
坂戸先生「はい、今の身体で、これは18歳のときから変わっていません。
でも、私の場合は別にそれで困っていませんからね。それどころか、椎間板が出ていない方を探すほうが難しいと思うくらいです」
伊藤「椎間板が出ている人のほうが多いのですか?」
坂戸先生「はい。人間だけでなく、 キリンもカバも、犬も猫も、みんな椎間板が飛び出ていますよ」
伊藤「・・・椎間板って飛び出るものなのですか?」
坂戸先生「はい。飛び出ていない人のほうが珍しいですね。
また、椎間板から飛び出る髄核は本来軟らかいものなので、神経を圧迫するなんてできません。
軟らかいもので硬いものをつぶすことは無理ですから。
基本的には、椎間板ヘルニアになったばかりなのに神経をつぶすのは不可能ですよ。
だから現在、お医者さんたちは椎間板ヘルニアによって神経の圧迫が起きるとは、言わなくなりましたね」
伊藤 「神経って硬いですもんね」
坂戸先生「はい。だからもう、不安に思っていること自体が間違いなのです。
椎間板ヘルニアで身体が痛み、手術したのなら、残念ながらその手術自体が無意味です」
坂戸先生「10年から20年も椎間板飛び出ているのなら、固まってしまうので、神経つぶす可能性は高いですね。
でも、飛び出たばかりなら神経をつぶすことはできません」
坂戸先生「私自身も身体の痛みを治す業界にいて、また昔は患者をやっていましたからね。
いろいろ勉強した中で、『筋肉が身体を支えている』という文章に出会ったこともあります」
伊藤「そういう文献もありますしね」
坂戸先生「あります。でも、ちょっと勉強すると、『その考えはおかしいんじゃないか』と思えていきます。
自分でテストをしてみればわかることですからね」
坂戸先生「それで今回の質問に関しては、筋肉が硬ければ神経をつぶしやすくなるということです。
これによって椎間板が飛び出しやすい状態が生まれてしまうので、硬い状態は良くないですね」
伊藤「ということで、積極的に筋肉を軟らかくしたほうがいいのでしょうか?」
坂戸先生「軟らかくしたほうがいいですね」
・・・「筋肉が身体を支えている」という考えがあると、筋肉を軟らかくすることに抵抗感を覚えてしまうものですが、硬いほうが身体にはデメリットをもたらすのですね。
3.まとめ
今回は、坂戸先生に「筋肉が身体を支えている」に対しての見解と、身体の仕組み、筋肉のあるべき状態について話していただきました。
いろいろとお話を伺ううえで、読者の皆さまも筋肉を軟らかくすることへの不安がなくなってきたかと思います。
筋肉の無緊張状態を作って、先生方と患者さまの健康につなげていきましょう!