治療家の先生方を悩ませる症状の一つである、膝の痛み。
歩いたり立ったり、階段を昇り降りしたりなど、膝は私たちが日常生活を送るうえで必要不可欠な部位です。
その膝に不具合が生じて動かせなくなると、患者さんが辛い思いをすることはもちろん、先生自身も悩みが増えていく・・・なんてことはよくありますよね。
しかし、そんな手ごわい膝の痛みは、指1本のアプローチを使った手技で解消できます!
しかも、数十分や1時間という長い時間をかけてでなく、わずか15秒で。
ほとんど不可能と言われていた膝痛の改善が、実に短時間での施術で可能になりました。
正座さえ辛く感じていた膝痛患者をも感動させる、今回ご紹介する手技は簡単でありながら、実はちょっとした注意点があります。
そこで今回は、膝痛を15秒で改善させる裏ワザ的な手技と、使う際の注意点についてお話していきます。
1.あらゆる慢性痛に対応できる、「緩消法」とは?
緩消法における重要なポイントは、固まってしまった筋肉を極限まで軟らかい状態に戻し、緊張状態を取り除くことです。
筋肉が固まっていると痛みだけでなく、しびれや冷えなどの症状まで生まれます。
その状態から無緊張状態にまで導いてあげれば、多くの症状が簡単に消えていきます。
膝の痛みに対しても同じことです。
注射や薬でもいずれは再発してしまう膝の痛みは、筋肉を正しいアプローチで緩めることで、治療家のあなたも患者さんも驚くほどスピーディーに消滅させられます。
2.膝痛で苦しんでいた女性も、正座ができるように
坂戸先生が緩消法のセミナーを開催した際に、ある女性(以下、Aさんとします)にご協力をお願いしました。
膝が痛いと訴えていて、試しに正座をしてもらうと苦しそうな様子です。
特に左膝に痛みを感じているということで、部分的な正座はできるものの完全な正座ができていませんでした。
膝痛患者さんに多い悩みに、「正座ができない」ということ。
しかしそれも、緩消法でいとも簡単に解決できます。
今回はそれを実際に試していきました。
膝痛を消滅させるには 腸骨筋から腹斜筋の付着部あたりへのアプローチが必要
そこでAさんに椅子に座ってもらい、デモンストレーションを始めました。
膝の前に指先を当て、Aさんに足を上げ下げしてもらいます(エクステンションの動き)。
こちらでも膝の痛みを楽にすることはできますが、症状を最速で消すためには、これからお話しするアプローチが欠かせません。
腸骨稜のあたり、腸骨筋から腹斜筋の付着部あたりまでに指先を当てます。
実際にそれらの部分を指で押してみると、Aさんは非常に痛そうな様子を見せました。
腸骨筋から腹斜筋付着部あたりまでが、すっかり硬結してしまっていたのです・・・。
そしてこれらの筋肉の硬結は、膝の痛みの原因でもあります。
腸骨筋から腹斜筋付着部あたりまでが固まってしまうと、膝が曲がらなくなります。
つまり、この部分の緊張を取り除けば、膝の痛みも取れるということです!
腸骨筋から腹斜筋付着部あたりに緩消法を試した結果は・・・?
腸骨筋から腹斜筋付着部あたりに指をあて、体を左右に倒しながら動いてもらいます。
これらの動きを3往復繰り返した後、改めて正座をしてもらいました。
すると、デモンストレーション前はいかにも正座が苦しそうであったのに、
その後はいたって楽に正座ができるようになっていました!
左膝の痛みがなくなったせいか、デモンストレーション前のときのような不完全な正座ではなく、きれいな正座になっていました。
かかった時間はわずか15秒。
通常であれば数十分から数時間、数回、それ以上の施術が必要になる施術効果を、これだけの短時間で実現できてしまったのです。
アプローチが難しい膝の痛みは、筋肉を軟らかくしてあげることで改善できます!
そしてそれを可能にするには、腸骨筋から腹斜筋付着部あたりへのアプローチがとても大事。
これさえ把握できていれば膝痛の解消はまったく難しいものではなくなり、あなたもその瞬間からゴッドハンドの治療家になれてしまうのです。
■ポイント
・膝の痛みは、腸骨筋から腹斜筋の付着部あたりの緊張から来ていて、これらの筋肉を緩めることが改善へのキーポイント
・腸骨筋から腹斜筋の付着部あたりに指先を当て、身体を左右に倒す動きを3往復する
・15秒ほどの動きが終わると、膝の痛みがなくなり、正座ができるようになる
3.効果半減!?緩消法の実践に忘れてはいけない「あるポイント」
膝の痛みを短時間で解消する緩消法は、多くの治療家の先生方にとって助けとなるでしょう。
しかし、緩消法を正しく使うためには、正しいアプローチを知っておく必要があります。
ここでアプローチを間違えてしまうと、施術効果が半減してしまうからです。
緩消法の真価を理解していただくため、治療家の先生(以下、Bさんとします)に間違ったアプローチの方法を試してもらいました。
指の腹を使うと、痛みを消せなくなる!
緩消法では指先を使って施術をおこないますが、今回はBさんに指の腹を使ってもらいました。
膝の前あたりの筋肉を指圧するように触れ、膝の痛みに悩んでいるAさんに足を動かしてもらいます。
デモンストレーション後、Aさんに正座をしてもらったところ、最初の頃よりは楽であるもののまだ痛みや苦しさが残っているということでした。
指の腹を使って緩消法を試してしまうと、効果が半減することがわかりました。
では、なぜ指の腹を使ってはいけないのか・・・?その理由は緩消法の目的にあります。
筋原線維を止めるには、「1cm²以下でのアプローチ」が必須!
まず筋原線維とは、筋肉の微細構造における構成単位のことです。
筋肉の束(筋束)からできている筋肉のなかには、筋繊維と筋原線維があります。筋繊維は0.1mmで、筋原線維は0,001mm。
つまり、筋原線維は筋繊維のなかに9,000本以上入っています。
この筋原線維を止めることが、緩消法のアプローチのポイントです。
1cm²以上ある指の腹を使ってしまうと、0,001mmの筋原線維にとっては面積が広すぎてしまう。
よって、緩消法のメカニズムが正しく働かなくなってしまうのです。
その分、指先であれば1cm²以下になるため、筋原線維に正しくアプローチすることができます!
指は親指でも人差し指でも問題なく、指先でさえあれば緩消法をマスターできます。
あらゆる痛みを消滅させられる緩消法は、固まった筋肉への正しいアプローチが欠かせません。
それさえできればゴッドハンドの実現が確実になりますので、使う際には十分に意識してみてくださいね。
■ポイント
・緩消法の目的は、筋繊維のなかの筋原線維の動きを止めること
・指の腹(1cm²以上)でなく指先(1cm²以下)を使うことで正しいアプローチができるようになる
・緩消法で指の腹を使うと、面積が広すぎてしまう、筋原線維の動きを止められない
・0.001mmの筋原線維にアプローチするには、1cm²以下で触れる必要がある
4.最後に・・・
歩けない、立つのが辛い、正座ができない、伸ばせない、動かせない・・・など数多くの悩みをもたらす膝の痛みをなかなか改善できず、
日々の施術で苦労されている治療家の先生方が本当に多いです。
そのような悩みも、今回ご紹介した緩消法を使えば、たったの15秒で消滅できます。
患者さんにも感謝され、先生自身も治療家としての自信をもう一度育てていけるようになるでしょう。
その目標を実現するためには、正しいアプローチと理解が欠かせません。
筋肉のこわばりへの適切な触れ方を忘れずに、緩消法の効果を最大限に発揮させていきましょう!